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生きてるだけで丸儲け

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2020.04.24

こんにちは!新入社員の宮﨑です。

先日、株式会社人事・労務さんによる「40年後も心に残る新入社員研修」を受講しました。コロナ禍で新人研修も、オンラインの時代です。そんなイレギュラーな研修の講師は、

御年62歳の元リクルート女性営業マン・盛和子先生(株式会社クロッシング・フォーラム)。何十年もの講師歴の中で、オンラインでの新人研修は今回が初ということでした。

他企業の新入社員さん含め計6人の新人に、穏やかであたたくも、味わい深いご指導をいただきました。ただ、研修内容に対して個人的に首をひねる瞬間がありました。まずは、正直にそれらを記してみます。

午前の部は、第一印象の重要性、ビジネス敬語や、好感の持たれる聴き方・話し方について。

「マナーは相手が評価するもの」

「身だしなみは清潔感・機能性・調和の三原則をおさえること」

「相手の目を見て話すこと」

「あいさつは条件反射のように。考えてからでは遅い」

「報告は結論から。無駄なく、簡潔に。論理的に話すこと。あいまいな言葉は使わない」

「相手の話を『違う』とは言わない。うなずきながら聴くこと」

一通り話したあとで、

先生「難しいことは何一つないんです」「役割を演じようと割り切ればいいのです」

と一言。

難しいことは何一つない…?割り切ればいい…?

めんどくさい新人だと思われるかもしれませんが、私は大学で社会学を専攻していたため、世の中で当たり前とされていることに疑いを抱いてしまいます。相手の目を見て話すことで逆に緊張を与えてしまうかもしれないし、快活に「おはようございます!」と言うことへの躊躇いがぬぐえないし、簡潔に話すことでそぎ落とされてしまうものがあると思います。曖昧なものの中にこそ確かなものが宿っているし、第一、ウチの社長は無駄話が意外と大事だと語っていたし。難しいことは何一つないなら、なぜ日本では、ビジネスマナー本やハウツー本がなくならないのか、疑問に思うのは私だけでしょうか。

うなずきながら聴く姿勢に努めつつ、内心「違う」と思いながらも、先生の話に耳を傾けていたら、

「では、ここまでの講義を受けて、内容の理解度とその理由、そして午後に向けての抱負を論理的に話してみましょう」というお題が出たので、胸に抱いた違和感を「論理的に」言葉にしてみました。

「理解度は70%です。理由は一度は聞いたことがある話が大半だからです。ものさしをもう一つ加えます。共感度は30%です。理由は日本におけるビジネスマナーでしかないからです。海外では、あいさつよりまずハグをかわすことだってあるからです。とはいえ、基本がおさえられていないと応用には進めないので、まずは基本をマスターします」。

ほかの新入社員さんが「理解度は40%くらい」と謙虚な姿勢を見せたのに対し、私はだいぶ生意気な発言をしましたが、先生は「そうですね、まずは基本。そのあと応用へという心構えでいきましょう」と寛大な心で受け止めてくださいました。

そのあと、お昼休憩を挟み、午後の部スタート。

名刺交換・席次から電話応対まで、たかがマナー、されどマナーだなと、さすがに感じる場面もありました。

名刺交換では、名刺の端を持ち、名前と会社のロゴが見えるように相手に手渡すこと。

受け取った名刺は胸の位置でキープ。胸下に下げてしまうと相手を見下しているような印象を与えかねない。

タクシーの席次は、聞こえが悪いが、新人は一番死ぬ確率の高い席に座ること。

電話応対では、「相手の声が聞き取りにくかったら?」というケース別対応の場面が、大変滑稽でした。

先生:「トゥルル、トゥルル、トゥルル」(電話音)

新人:「お電話ありがとうございます。株式会社〇〇の△△でございます」

先生:「私、◎$♪×△¥●&?#$!と申します」

新人:「あ、えーっと、大変申し訳ございませんが、もう少しゆっくり話してもらえますか?」

ミュートで声が聞こえないのをいいことに、思わず大爆笑してしまいました。

疑問もありながら、なんだかんだで楽しく学ぶことができた新入社員研修でしたが、全プログラムの中で一番、心に残ったのは、ビジネスマナー講義に入る前の導入部分でした。

司会の方から、「あなたにとっての成功とは?」「あなたにとって一番幸せな状態とは?」という質問が投げかけられました。社会人になって間もない新人たちは、それぞれ「社会に貢献することが成功」、「自分のやりたいことにチャレンジできることが幸せな状態」だというような回答をしていましたが、先生は一線を画していました。

「私にとっての成功とは死ぬ直前までわからない」

「実は私、12年前に脳梗塞をやりまして、その瞬間は喋れない、歩けない、右手が動かない。頭はしっかりしてるから、どうか神様もう少し生かせてくださいということをお願いしたんですね。それがあってから、私にとっての幸せは、朝起きて、あ、歩けるな今日。喋れるな。ご飯がおいしいなと思えること。愛犬と散歩ができること。こういうレベルなんですけど、これが日々幸せだなと感じていることです」

生きてきた時間の差を圧倒的に感じました。

研修が終わり、心に残った先生の言葉を、夕食の席で母親に話しました。テレビでは、新型コロナウイルスによる肺炎で、俳優の岡江久美子さんが亡くなったという報道が流れていました。

「ほんとそう。生きてるだけで丸儲け、なんだよ」

介護現場で働く母親だからこその言葉だと思いますが、先生の語りぶりからも、そして昨今の新型コロナウイルスで揺れる世相からも、誰も否定できない、静かに突き刺さる一言のように思えました。

違和感が残ること、思い通りにならないこと、特に若いうちはそんなことばかりな気がしますが、命がなければ何もできない。生きてるだけで丸儲け。

40年後も生きながらえて、ふと、新入社員研修を思い返す時間に立ち会えていたら、いいな。

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