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境界線を解きほぐす

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2020.05.25

「NO MORE! SDGsウォッシュ『グリーン・ライ~エコの嘘~』が暴く皮肉な現実」

無事終了しました。視聴してくださった方、誠にありがとうございました。

NO MORE! SDGsシリーズ第二弾にして、ユナイテッドピープル代表の関根健次さま、国立環境研究所の江守正多さまにご登壇いただきましたが、いつか大川印刷としてコラボしてみたいと思っていたお二人と、このタイミングでご一緒できたことはとても贅沢な機会だったと思っております。

一方で、ゲストの属性にしても扱うテーマにしても専門性の高い内容を、前回より多くの方に見ていただくことになったため、私としてはより一層緊張していました。気持ちを鎮めるため、本番前に『グリーン・ライ』になぞらえてグリーンのTシャツを着てみたり(グリーンバックと化しましたが)、Fridays For Future(スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんの学校ストライキムーブメント)で活動していたときによく被っていたシロクマを身に着けたりしてみたところ、少し安心して臨むことができました。

余談はさておき。

今回のイベントを企画した身として、どんなメッセージを視聴者に、社会に伝えたかったのか、この場を借りて書かせていただきたいと思います。

まず、イベントのタイトルですが、だいぶいかつい印象を与えていると思います。「何だよ、SDGsウォッシュってえらそうに」。そう思う方も実際いらっしゃるような気がします。私自身、タイトルは語呂がいいなという感覚だけで決めたので、正直深く考えていないです。すみません。

では、何がしたかったのか。それは、境界線を解きほぐすこと、です。

今回は『グリーン・ライ』という、環境保護の観点からすると、どんぴしゃな内容を扱ったトークイベントでしたが、私はどこかでグリーン一色に染まりたくないと思っていました(グリーンのTシャツ着てるくせにえらそうですが)。

パーム油市場の悲惨な実態、脱炭素への大転換、再生可能エネルギーの必要性。

ゲストの方に私からお願いしているテーマがテーマなので、どうしても同じような類いの言葉が生まれやすくなるのは当然のことではあるのですが、“ありふれた”議論だけでは終わりたくないと思っていました。

僭越ながら、対談の終盤で私がお話させていただいた、「白か黒かの議論ではない、グレーゾーンの話をしてもいいのではないか」とは、こんなイベントを知る由もないような、グリーンなキーワードで検索しても引っかからない、ヒットしない人たちをも内包した議論をしたいという思いが背景にありました。

去年、Fridaysの活動をしていたときに身に染みて感じたことですが、気候変動や地球温暖化の問題は知れば知るほど、データに基づいた正しい知識へのアクセスに追われていきます。そしてその知識をある程度身に着けると、自分が得たものを他者に説きたくなってしまったり、ともすれば知ったかぶりになってしまうことがあります。

一人でも多くの人が問題を問題として認識するためには、必要なアクションであるはずなのに、知らず知らずのうちに自分の中にできたものさし、“嘘発見器”で白か黒かの判決を下してしまう危うさにからめとられてしまうような、とても皮肉な現実があるような気がしていました。アルバイト先での経験は、まさにそのことを私に教えてくれました。ただ「清く正しく美しくいるだけでは世の中動かない」ということです。

今年の2月、私は16年飼ってきた愛猫を癌で亡くし、気候変動への活動を一時ストップしました。そのときようやく、自分は何者でもない人間だったという感覚を思い出し、それ以降、他者へのまなざしが少しずつ変わっていきました。活動家と名乗っている人たちの、活動家だからこそ伝えられることと、活動家だからこそ伝えられないことへのままならなさに興味がわきました。

今回のゲストでいえば、

関根さんがいつかどこかでシロクマを被ったら、意外と似合うのではないか。

江守さんがパパとして子供と接するとき、ディズニーやポケモンを見ながらどんなリアクションをしているんだろう。

大川社長は家でギターを弾いているとき、いつも5本指ソックスを履いているのだろうか(「うちで踊ろう」動画より)。

そんなことがちらっと頭に浮かびます。それらは全く、CO2を削減することや環境を守ることには直結していません。具体的でもなければ、参考にすらならない、くだらないことかもしれない。

けれど、余談の中にこそ、くだらなさの中にこそ、何か手がかりがあるような気もします。正しいことを言えば人はついてきてくれるかというと、そうではない。その人の人となりに心を動かされてはじめて、人の感情は緩むのではないか、と思います。

私は正直、ドキュメンタリーものの映画を観るとうたた寝をしてしまいがちです。けれど、『グリーン・ライ』は本編最後まで興味をもって鑑賞できました。それは、ブーテ監督とハートマンさんのコミカルなやり取りにお腹をくすぐられたからな気がしています。

予め決められた枠におさまりきらないもの、零れ落ちているものへの想像力。

私たちはしばしば、一つの尺度で何かを論じてしまいがちですが、思いもよらないところに何かが転がっているかもしれません。一見、無駄で遠回りなことのように思えるかもしれませんが、最短距離で最高の結果を得ようとしたら出会えないものに巡り合えるとしたら。境界線を解きほぐすことで立ち上がってくるものって、意外と少なくない気がします。

行動を!と声高に叫ぶのではなく、積極的にじっとしてみる。実感の及ばない他者にも耳を傾けてみる。環境を守ることが科学的にどれだけ正しいことか証明されていても、反対の意見を言う人や曖昧にしか返答ができない人を切り捨てることはできない。予期せぬ他者を思い切って歓迎してみる姿勢は、どんな問題にも例外なく切実なものに思えます。

以上のような思いでお話させていただきましたが、配信中、“ファシリテーター”らしからぬ振る舞いをしていたかもしれません。自らイベントの企画をした以上、単にプログラムを進行させるだけの黒子ではいられませんでした。今後、どんな立ち位置で参加できるだろうと気づくきっかけにもなりました。ありがとうございます。

いずれにしても、ゲストの方含めお三方のお話はとても示唆に富んだ、今この瞬間にしか生まれない対話の連続で、時間制限にただただ悔やむばかりでした。

ぜひ、アーカイブで何度でもじっくりご覧いただけたらと思います。

なお、チャットに寄せられた質問への事後回答はこちらからご覧になれます。

引き続き、イベントへのご感想もお待ちしておりますので、まだご回答お済みでない方はよろしくお願いいたします。

それでは、第三弾のイベントでまたお会いしましょう!

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