SDGsが国連で採択されて5周年。「世界気候アクション」も開催された9月25日(金)。
パダワン宮﨑は、太陽光・風力(カイト)・水素の100%再生エネルギーを動力とした、「レース・フォー・ウォーター号」視察会に出席してきました!
これは、スイスの環境保護団体「レース・フォー・ウォーター財団」が開発した船で、プラスチックごみによる海洋汚染の実態調査を行っています。
このプロジェクトに賛同し財団と連携協定を結んだ、特定非営利活動法人ゼリ・ジャパン主催、再エネ 100 宣言 RE Action(当社も加盟)共催でイベントが開催され、再エネを推進する企業・行政がボート上に会し、2050 年のサステナビリティ実現について意見がかわされました。
今回は、化石燃料無使用で東京まで航海してきたというエキサイティングな船の見学会、その一部始終をレポートします!
見学会当日はあいにく、曇のち雨。天王洲アイル駅に到着し、品川埠頭近くの船着き場へ向かうと、小雨が降る中でも、存在感を放ったその船は、堂々と港に停泊していました。
船内サロンにてウォーター号のキャプテンより船についての説明を受けたのち、実際に船内をまわり見学を行いました。
キャプテンによると、ウォーター号は「カタマラン」という双胴船の形式の船で世界一の大きさとのことでした!
そして、2010年に設立された先のレース・フォー財団では、「Learn」「Share」「Act」という3つのミッションを掲げて活動しているそうです。
「Learn」学習。研究者の方々とともに、海洋プラスチックの現状を研究。
「Share」共有。我々がもつ情報を若年層に発信するとともに、企業関係者や政策決定者に警鐘を鳴らす。
「Act」行動。研究の成果を伝え、革新的ソリューションを提供する。
キャプテンの説明とともに、こちらの動画を鑑賞しました。
動画を鑑賞したあとは、靴下を脱いで、いざ船内ツアーへ!
急な階段をあがり船の一番上”サンデッキ”へあがると、デッキ一体に太陽光パネルが!
混合電力となる3つのエネルギーについて、順番にガイドを聴きました。
①水素
海水を汲み上げてフィルターを通し真水にします。原理は通常のプレジャーボートでも使われています。真水がH2Oになるので、それを電気分解し、水素と酸素にわけます。
ここで最大のパワーを使います!そして、水素と酸素にわけて、酸素はそのまま流してしまいますが、水素を取り込んでコンプレッサーでぎゅっと圧縮して、足元のタンクにため置きます。
私たちが立っている、この下に25本のボンベが有り、そこに圧縮して水素をためています。
ためた水素を使う際には燃料電池を介して電気にし、モーターを通してプロペラを回し進んでいきます。ちなみに、ゼロからフルマックスのタンクにするのには3ヶ月かかるそうです。。。
②太陽光
両サイドには512m2のソーラーパネルがあり、8トンのバッテリーが搭載されています。
見学会時はパネルを縮めている状態でしたが、広いところに出るとパネルが羽のように伸び、さらに太陽光を集めます。こちらの太陽光パネルで水素の電気分解をします。
③カイト
マストの上にひもを伸ばして約100~150メートル上空にカイト布を広げ、風を受けて走ります。カイトを使う際は電気は関係なく、風の力だけで走ります。
ウォーター号はこれら3つのエネルギーで航行します。
化石燃料は一切使用せず!
つづいては、船の操縦をする操舵室へ。
【操舵室】
真ん中がスロットルで前に倒せば前進、後ろに倒せば後進、車のアクセルと同じです。
目の前には近代的なディスプレイがあります。
上の小さい計器類は緯度経度、本船の進路や速力、風光や風速、気圧が記録されています。
左側のディスプレイは電子海図になっています。キャプテンの席から見ると見通しが悪いんですが、足元を見るためにカメラが設置されています。それを見ながら操船していきます。
これらは言ってしまえば普通。
ただ、「レース・フォー・ウォーター号」ならではのポイントがこの小さな2つのディスプレイに集約されています!
左側のディスプレイは、ソーラー発電を確認するためのもの。右側は、水素の状態をモニタリングするためのもの。
左側、赤い数字が「3.4」と右上に表示されていますが、これが現在の発電量。撮影当日は曇りでしたが、問題なく発電されていました。
左側の青いものは「3.7」。少し多いですが船内消費量は3.7kwでした。
微力ですが、0.2kwバッテリーから使っている状態。バッテリーの残量は残り70%です。
ウォーター号のバッテリーは2つのフロート、この中に4トン4トンのリチウムイオンバッテリーが搭載されています。
右側は水素なのですが、水素は高エネルギーです。このバッテリーはフル充電95%に達して以降、どんなにつくっても捨てるだけで、陸上であれば電力会社に売るなどできますがそれは不可能なので、余剰電力で水素を作っていきます。
ウォーター号の最大の特徴は、この水から水素をつくることができる!ことにあります。
水素は全部で200kg保管することができ、水素だけで7日間走ることが可能です。
一方、バッテリーは一日のみです。このバッテリーはエネルギー効率がいいのですが、水素をフル充電0から100%の状態にするのには、なんと3ヶ月かかります!
ですので、水素はかなり重要なのです!
水素を使うには、断腸の思いで発電に使うのですが、基本的にはリチウムイオンバッテリーで動いていきます。
リチウムイオンバッテリーは全部で8トンあり、先程のフロートの中に4トンずつ入っています。
トンというとぴんとこないですが、745キロワット時です。
自宅で家庭用の蓄電池を置かれる方もいますが、一般的には9キロワット時です。
つまり、80軒分のバッテリーが本船に積まれているということです。これで一日ちょっと。
バッテリーなくなったらどうするか?
船内の消費を抑えます。実際、大坂から千葉を経由してここに来るまで、低気圧でずっと曇りだったそうです。そのときには船内の空調を止め、2週間くらい船内は大変暑かったとのことです。それでもなくなったら、安全のために積んでいる非常用発電機で対処するそうですが、使ったことは見たことがないそうです。
キャプテンはかなり長期的に気象を見ながら走っていきます。
いいことずくめの船ですが、よくないことはスピードがめちゃくちゃ遅いことだそうです。普通の船だと15ノット、時速30kmくらいで走るんですが、ウォーター号は3.5ノット。時速6キロくらい、速歩きのスピードくらいです。カイトで進むと速く、10ノット、時速18kmくらいは出るのですが、プロペラは頑張っても5ノット、時速8キロくらいしか出ないとのこと。人間が耐えしのげればずっと永遠に走ることができる!ということです。
ちなみにガイドのお兄さんは、元々航海士をしていたそうで、電気で進む船でいいなと思ったのは、スポーツカーや大型の船だと乗る前からエンジンを温める必要があるそうですが、この船の場合は家電と同じで、電源を立ち上げればすぐに進める。キャプテンは出航ギリギリまで寝ていられるという、機動性のよい船だとおっしゃっていました。
キャプテンチェアにも座らせていただきました!
操舵室の見学のあとは、サロンに戻りカイトの説明を受けました。
マストを立てた状態にして、サラヤのフラッグがついているところを低くしてカイトをとりつけます。カイトは折りたたまれた状態になっていてロボットがついています。ロボットには2本のロープ状のものがついていて、これがカイトにつながっていてエンジンにつながり、操縦します。
コンピュータ制御のものでWi-Fiでつながっています。カイトをつなげたらマストを立てて、カイトを上にあげます。
カイトは電気を発生させるものではなくて物理的に船を引っ張るためのものです。
カイトを上空に放つと、150~200メートルまで上がります。Wi-Fiでつながったロボットを使い、自動制御でカイトを操ります。40㎡のカイトです。
電気のエンジンと比べて2倍の移動力を生み出します。ロボットにバッテリーがついていて、9時間駆動できますが、そのあとはバッテリー交換のために一度ロボットを外しバッテリーをかえます。
特別なライトがついているので、夜もカイトは操縦できます。
船を引っ張る源力になるように、上空で8の字に操作します。船が目的地に到着したときや、風が全くないとき、カイトは収納してマストを小さくします。
見学会終了後、再エネテーマの鼎談、
「2050 年のサステナブル目標~エネルギーを再エネ 100%へ~ 鼎談 on レース・フォー・ウォーター号」が行われました。
テレビ朝日アナウンサー山口豊氏の進行のもと、
品川区副区長の和氣正典氏、
株式会社丸井グループサステナビリティ部長の関崎陽子氏、
サラヤ株式会社代表取締役社長の更家悠介氏が、2050年のサステナブルな社会に向けて議論を展開されました。
鼎談の詳細については、再エネ100宣言 RE ActionのHPにて、また、環境ビジネスオンラインの記事、”再エネ100%の海洋プラ調査船でRE100企業らが鼎談「政策で後押しを」”にも掲載されています。ぜひご一読ください!
鼎談終了後は、再エネ 100 宣言 RE Action参加団体による見学会があり、早めに乗船していた私は贅沢なことに2回も船の説明を聴くことができました。
2回目の説明裏ではサンデッキにて、ちゃっかり「世界気候アクション」用に、写真を撮影しました!
おそらく再エネ100の船の上から、シューズアクションをしたジャパニーズは私だけだったと思います。超レアもの!
その後、無事見学会を終え、天王洲アイルをあとにし国会議事堂前に向かったのでした。
「世界気候アクション」の様子はこちらから。
★感想★
海から真水を汲み上げて、それを水素に変えられるため、人間が耐え忍べばいくらでも走れるという、再エネの象徴ともいえる要素てんこもりの船でした。ガイドのお兄さんがイケメンで、ひそかにテンションあがりました!
私自身、実はあまり「見えない」エネルギーに対して、どうしても気概を持つことができていなかったのですが、ウォーター号の画期的な技術や、エキサイティングな試みに触れてとてもインスパイアされました。CO2ゼロ印刷を手掛ける大川印刷に入社して改めてよかったと感じるとともに、これからその一員として、精力的に外部発信していきたいと思いを新たにしました。
ウォーター号の航海の様子は、こちらからリアルタイムで確認できます。