※ご参加くださった方々へ、ぜひアンケートのご回答をお願いいたします。こちらから。
大川印刷のSDGs報告会は、この度の「大川、SDGsやめるってよ!?~儲けるだけのSDGsはもういらない~第3回SDGs報告(再考)会」にて、第3回目を迎えることとなりました。
実は2019年4月26日開催の「やってみよう、が世界を変える第2回SDGs報告会」にて、2018年度の報告会を行ったきり、イベントの開催が手つかず状態になっておりました。
過去のSDGs報告会では、大川印刷の従業員が単年度制のプロジェクトチーム活動に関して、その成果発表を行う場としてイベントが企画されていました。
一方で、最後にSDGs報告会が開催された2019年度とは比べ物にならないほど、最近は、SDGsがあらゆる場所でもてはやされています。
すっかり手垢のついたSDGsを、このまま推進したところで、果たして本当に持続可能な未来は訪れるのか?
そんな問いを抱いたが最後、見過ごすことはできませんでした。
この問いに唯一答えることができるのは、あの人しかいない。
自ずと浮かんだのが、『人新世の「資本論」』著者、斎藤幸平さんです。
斎藤さんは「SDGsは大衆のアヘンである!」と喝破し、現行の資本主義そのものを徹底的に批判しています。
『人新世の「資本論」』がベストセラーを記録し、これだけ斎藤さんの議論が注目されている今こそ、
また、気候変動を左右する大きな分かれ道に立つ、この2021年こそ、SDGsを軌道修正させるラストチャンスだと直感し、社外のステークホルダーのみならず、社内の従業員にも、大きな気付きをもたらすようなイベントを考えはじめました。
<2021年5月頃>
「大川、SDGsやめるってよ!?」イベントタイトルは、あるとき、ふと思い出した某小説からもじらせていただき、
これを見た大川が、「儲けるだけのSDGsはもういらない」というサブタイトルをつけました。
今回は集客にも力を入れるべく、およそ一ヶ月前にはイベント告知をスタートさせました。
告知公開後は、斎藤さんが本の中で提唱されている、<コモン>(共通財産)について、より具体的な事例も参照する必要があるということで、
ワーカーズコープの古村伸宏様の登壇が決まりました。
<2021年5~6月頃>
それ以降、イベント開催に至るまで、本格的な準備が始まりました。
告知開始時点では、『人新世の「資本論」』を知っている/読んでいる従業員は、恥ずかしながらほんの数人でした。
そこで、斎藤さんの議論について、従業員の意識を高めるワークショップを2回に渡り、開催してきました。
今年はなんと、7名ものインターン生の受け入れを始めていたことから、
インターン生とともに、若者世代から年配世代をエンパワーメントするような過程を、イベント準備段階から踏んできました。
具体的には、斎藤さんが出演されているオンラインイベントのアーカイブ上映会を開いたり、
『人新世の「資本論」』ミニ読書会を開催しました。
参加した従業員からは、声をあげる大切さを実感したというコメントの一方で、
「話の規模が大きくて自分にできそうな事がよく分からないと感じた」「具体的に本質としてどのような行動をとるべきなのかわからない」という声が根強く、なかなか社内の人だとしても、意識を変えることは容易ではないという現実を突きつけられました。
一方で、イベントへの申込者数は日に日に増し、イベントに期待する声の中には、
「営利企業として、SDGsとどのように向き合い(それとも向き合わないのか)、具体的にどのようなアクションを取っていくのか」
「真にあるべき世界の姿と企業の現場を架橋するような、踏み込んだお話が聞きたい」というような意見が多く寄せられていました。
司会を務めることになった宮﨑と、インターン生の中田は、これら申込者の意見をもとに、本番当日ぎりぎりまでパネルディスカッションの構成を練っていきました。
「大川印刷のやってきたことや課題感から、社会の動向や斎藤さんの主張を見る」という大きな方向性をすえ、現場で働く従業員にも参加をお願いしました。
そして迎えた本番。
第一部では、「これまでのSDGs」をテーマに、今までの大川印刷の取り組みをご紹介しました。
まずは、大川印刷が行う環境に正しい印刷について、「環境印刷を(もっと)知ろうぜ」と題した動画を見ていただきました。
ラジオ演出で、環境印刷の三つの柱についてわかりやすく説明しています。
その後、2019,20年度のSDGs経営計画活動報告を、各プロジェクトのリーダーからお話しさせていただきました。
2017年から年度ごとに行っている、ボトムアップ提案型、全従業員参加によるプロジェクトチーム。
社内改善や社会や地域が抱える課題に対する対応、SDGsの17のゴール達成のための活動に、従業員さん主体で取り組んでいます。
第二部に入る前には、工場紹介動画も流しました。
従業員さんたちが、ものづくりや会社への「想い」を語っています。
オンライン開催ではありましたが、視聴者の方々に、大川印刷で働いている従業員さんの様子を感じていただけたようです。
そしていよいよ第二部、「これからのSDGs」へ。
大阪市立大学准教授で、『人新世の「資本論」』の著者、斎藤幸平様に基調講演をいただきました。
今のSDGsのままでは、課題を解決できないどころか、むしろ自己満足に陥ってしまい有害でさえある、というご指摘と共に、
これから求められるシステムチェンジと具体的な事例について教えていただきました。
基調講演のお話を踏まえ、日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会理事長の古村伸宏様を迎えて、パネルディスカッションへ。
品質保証部の草間と製造部製本課の松尾から、従業員さん目線での疑問や意見も。
また、入社二年目の宮﨑やインターン生の中田から、現状への危機感と理想の社会をお話しさせていただきました。
最後には、今回の再考会の話を受けて、大川社長が今後の大川印刷の展望を語りました。
事後アンケートでは、多くの方々にご好評の声をいただきました!
「中小企業でありながら、力強く声をあげて行動する皆さんの姿に勇気をもらえました。」
「従業員が主体となった取組はどれも非常によいものだと思いました。」
「明るい、そして元気な社員さんの姿に感動しました。」
「斎藤さんの公演を経た葛藤が整理できていく過程、ワーカーズコープの具体的な取り組みの紹介もよかったです。」
「インターン生から社長、学者の方が一堂に会してパネルディスカッションを行うというのは、これまでに見たことがない光景だったのでとても新鮮でした。」
以下、当日、司会兼パネラーを務めたインターン生の中田柚葉さんからの感想です。
【中田の感想】
「企業は、変われるのか?企業は、社会を変えられるのか?」
それを確かめることが、私が大川印刷にインターンに来た理由でした。
加速する利潤追求、絶え間ない人間や自然からの搾取。
届かない市民や若者の声。
このままではいけないとはわかっていても、「生きていくためにはお金が必要」「そうは言ってもしょうがない」と、ため息ばかり聞こえる中で、私たちは諦めるしかないのだろうか…。
そんな葛藤の中、たどり着いたのが大川印刷でした。
再考会を開いてみて、多くの参加者が共に悩み、理想を考えてくださったことをとても嬉しく思いました。
本イベントでは、従業員さんの葛藤や若者の焦燥感も含めてみなさんにお伝えすることで、綺麗ごとや口だけの議論ではなく、もがきながら必死に前に進もうとする姿をお見せしたいと考えていました。
大川印刷だけでは、中小企業だけでは、変わらない。
しかし、大川印刷なくしては、中小企業の頑張りなくしては、社会は変わらない、というのも事実なように思います。
違和感を持って理想を語り、その輪を広げてシステムに働きかけていくことで、少しでもよい方向に変わっていく可能性があるのならば、諦めたくはありません。
同時に、いいことをしようと頑張る人が損する世の中なんておかしい!と、叫び続けなくてはいけないでしょう。
本来、経済・政治システムは、人々の幸せのための道具であるはずです。
それが逆に、システムが人間を支配し「しょうがない…」と言わせているのならば、私たちの手に「社会」を取り戻していかなくてはいけません。
一学生の私がみなさんに語り掛けることができたように、SDGs再考会を見てくださった方々も社会を動かす力を持っています。
しょうがないことなんて、ありません。
私たちの社会は、私たちがつくるのです。
理想を描いて動き出す勇気や未来への希望を、みなさんに少しでも感じていただけたのなら、幸いです。
続いて、同じく司会兼パネラーを務めた、経営企画広報室の宮﨑から感想です。
【宮﨑の感想】
誤解を恐れずに言えば、大川印刷に入ってから、その実直な活動に尊敬の念を抱きつつも、
全く異質な意見や存在、他者に対して、どこか排他的ではないか?という疑問を持っていました。
Fridays For Futureで活動していた体験も、やはり自分とは違う社会運動をしてきた宮﨑さんと認識されがちで、
なかなか一線を超えられないもどかしさを感じていました。
だからこそ、今回の報告会は、社外の方々に大川印刷が行ってきたプロジェクト活動の成果を報告するという企画に終わらせず、
大川印刷の中で働く従業員にこそ、パラダイム・シフトを予感させるような、それまでの価値観に揺さぶりをかけるような大胆なイベントに仕上げたいと決意しました。
したがって、「大川、SDGsやめるってよ!?~儲けるだけのSDGsはもういらない~第3回SDGs報告(再考)会」において、
私が掲げていた裏テーマは、「異質な他者と対話をし、自分の実感の及ぶ範囲を拡げる」ことでした。
私や大川印刷含め、日本人は特に同質的な集団に閉じ、理解できない他者に対して、しばしば不寛容です。
けれど、自分の所属するコミュニティに安住し、コンフォートゾーンにとどまっているばかりでは、決して変化は起こせません。
自ら相手の懐に飛び込み、対話を続けていくことでしか、システムチェンジという大きな変革は起こし得ない。
私はその意味においての「人間活動」を粘り強く実践し、「人間活動」に起因する気候危機に立ち向かっていきたいです。
先週、最終回を迎えた「ドラゴン桜」の桜木先生のセリフを心に刻みつけて、これからも生きていきます。
「お前ら、いつか俺が言ったことを覚えてるか。くそみたいな人生を変えられるのは自分しかいない。
人は誰かを変えることなんてできねえ。俺はそう言った。
だがよく覚えておけ、お前らがまっすぐな思いで突き進むとき、その姿は他の誰かを動かす原動力になる。
自分を信じてまっすぐ突き進め!
そうすれば、いつかその姿は、人に勇気を与え、希望を与える。お前らの熱意、努力、思いやりが周りの人間を突き動かす。
そしてそれは巡り巡って、いつか社会を変えていくんだ。
人生を切り拓け!常識を変えろ!こっから先の未来をつくっていくのは、国でも環境でもねえ!お前ら自身だ!
お前らバカはもうバカじゃねえ、お前らには仲間がいる。その輪を広げていけ、いいか、自分の信じる道を行け!」