「中小企業が活躍する新しい時代のSDGs経営」との演題で講演。
(トップの写真は司会を務められた小野木梨衣さんと)
全国からおよそ100名の方がウェビナーで聴講してくださった。
中小企業が大部分で一部大企業の方々の参加もあった。
中小企業の経営もコロナ禍で大変なことは言うまでもない。
業績不振の会社、3つの特徴
日本電産の永守さんが業績不振の会社の3つの特徴として「驕り」「油断」「マンネリ」を挙げておられたのが印象的で、自社も自分も常にこの3つに陥っていないかチェックするようにしている。
SDGs報告会改め再考会「大川SDGsやめるってよ!」を開催したことから、誤解されることも多いので今回の講演でも最初にお伝えしたがSDGsに関しても同様で、おごりや油断がないかチェックする必要性を感じている。弊社も私も全てができているわけではなく、だからこそ常に自己診断、セルフチェックが必要と考えている。
会社にとって使命とは何か?
いつも言っていることだが、30代前半にコンサルタントの方に言われた言葉が忘れられない。それは「会社にとって使命とは何か?」という問いに対する答えだ。
会社にとっての使命とは「『明日あなたの会社がなくなったら、あなたのお客さんは本当に困りますか?』と言うことだ」と説明された。
今現在も、そしてこれから先も、自分がバトンを渡した後継者も同様の問いに対して考え行動し続けることになると思う。
このような視点で自社を考える時、SDGsがとても役立つという話だ。なぜなら地域や社会に必要とされる企業とは、様々な課題を解決できる企業だからと考えるからだ。SDGsには数多くの重要な課題を教えてくれている。
中小企業だからこそできるSDGsの取り組み方
近年発売されてきたSDGs関連の大量の書籍。もうどれを見たらよいかわからないし、知ろうと思えば思う程、混乱するのではないか。学者の方々の話も大切だが、中小企業においては特に実践を行った上での話が大事だと思う。コンサルタントの方々にも申し訳ないが、私たち中小企業経営者が求めているのはどこかで誰かに聴いてきた話ではなく、実際に苦労しながら取り組んできた生々しい話だ。どんなにいい話を聴いても、話を聴くのと会社で実際に動かすのとは全然違うのだ。そんなことを気にしながら話を進めていった。
中小企業だからこその取り組みのひとつ目は、地域密着の地域企業だからこそ、自社の使命について徹底的にリアルに考えられることだと思う。ここ何年か大企業が地域に降りてきて我々のような中小企業と協働して地域課題解決をする取り組みが行われている。そこで大企業の方々と話をすると、驚くほど地域のことを知らない。それも無理ない。我々地域企業はその地域に何年も根を張って定着してきた中で、数多くのことを感じ学んでいるのだから。だから中小企業は自信を持って欲しい。
ふたつ目は「全従業員SDGs担当」も夢ではないということ。SDGsの取り組みで弊社の自慢は従業員さんだ。これも誤解されるので言っておくが、全員が全員SDGsを十二分に理解して邁進しているわけではない。が、個人差はあるにせよ、みんなで進めていこうという気持ちはとてもありがたいことで素晴らしいことだと感じている。
大企業で講演をさせて頂くと事前の打ち合わせで数多くの悩みをお聴きする。SDGs担当部門だけ、担当者だけが悩み、なかなか社内全体に理解が得られないと嘆く会社、SDGs担当部門や若者はやる気満々の一方で、「社長がわかっていない」とやりにくさを訴える企業などなど、いろいろだ。それに対し中小企業は人数が少ない。全体に経営者が呼びかけ、語り続け、そして一人ひとりと話し合い進めていくこともできる。実はそれこそが顧客に対しても中小企業の強みになる。
個々の経験、そこから湧き上がる課題感や希望。それこそがSDGsの原動力
上記中小企業ならではの取り組み方は、更に組織力や提案力のアップにつなげていくことができる。弊社では全従業員で年に一度行うワークショップで様々な課題や希望について話し合うが、語り合い続けることで自分たちが、あるいは自分が何をしたいのかが見えてくることがある。そうしたらしめたもので、仕事と関連付けて自分たちのやりたいことを実現する方法を考えていく。もちろんなかなか見えてこないで苦労することもたくさんあるが、そもそも語り合うこともせず与えられた仕事だけやっているのと比べれば、おのずと差は出てくるのではないか。人は、それぞれ経験してきたことは違う。違うからこそ一人ひとりの課題感も希望も異なってくる。それを経営に活かすのは容易くはないが、互いに話し合いを継続していくことが「文化」になっていくことによって、変化は起きるものだと思う。
真のパートナーシップでゴールの達成を
現在の「SDGsブーム」のおかげで、身近に起きている問題を見過ごすことが増えているように感じる。バッジをつけて、カラフルなアイコンをホームページ等に掲載すれば、なんとなくSDGsに取り組んでいるように見えるし、取り組んでいる気にもなれる。しかし重要なのはゴールの達成だ。特にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次報告書では人間の活動が温暖化を引き起こしていることは「疑う余地がない」と初めて明記され、ただちに行動を起こさなければならないと言われている。自分の会社が一番になる、一番儲かるかどうかを考えるのもわかるが、その前にビジネスが成立しなくなる日が来るかもしれない。競合同士対立するのではなく、競合とも協力し合いゴールを目指していくことが求められている。
おわり