大川印刷では4年程前から「会社案内+α」という商品・サービスを進めてきた。当初は中小企業向けに、大企業からのSDGsの取り組み要請に備えることを目的としてやってきたが、ここに来て変化が起き始めている。徐々にだが、大企業やベンチャー企業からの問い合わせが増えているのだ。
私も統合報告書の打ち合わせに同席しているので肌感覚として実感し始めているのは、大企業のSDGsが明らかに変わり始めているということだ。
それは「見せるSDGs」「儲けるSDGs」が仮に「SDGs1.0」ならば、今は明らかに「SDGs2.0」と言った、バージョンが変わってきているのだと感じる。
その変化は以下のようなものだ。
1.脱炭素経営への明確なシフト
それは脱炭素経営に向けた世界的な変化はもちろんのこと、国内でも脱炭素へ向けた行動がいよいよ必要となってきた実感を持ったのだろう。菅総理時代に打ち出された脱炭素宣言、脱炭素法の成立はもちろん影響していると感じる。「岸田総理の体制になってその波は減速する」と言った見方をしている環境活動家もいるが、私はそうは思わない。正確に言えば「気にしていない」。
なぜならそれは市民ムーブメントとして世界各地で起きている「気候市民会議」などの動きも、これからより活発していくことが予測されるからだ。現在横浜市地球温暖化対策推進協議会でも開催準備が着々と進んでいる。
2.自社のSDGsに正直限界を感じ始めた企業やステークホルダーの増加
大企業も含む企業の多くが、これまでやってきた事業に紐付けをおこない、それを「当社のSDGsへの取り組み」としていることへの限界、もっと言ってしまえば、推進しているように見せること自体に限界を企業も実感しだしたし、ステークホルダーも気づいてしまった、ということだと思う。そこで「会社案内+α」で行っているサービスの、自社事業に関連する社会課題の解決につながる具体的な活動やアドバイスに関心が高まっているのだと感じる。言うならば、具体的な本業を通じた、あるいは本業に関係する社会課題解決に乗り出し、より高い社会的インパクトを出そうとするのがSDGs2.0だと言える。(そもそもこれが1.0であるべきなのだが。)
3.企業の持続可能性を心配する従業員
これまでのCSRと同様、「企業価値の向上」を目的としてSDGsに取り組もうとする企業も多くみられた。これはSDGs1.0。
SDGs2.0は、分かりやすく言えば、企業価値向上程度にしか考えない経営陣、自分の働く場所としての企業の持続可能性に不安を感じた従業員たちが、立ち上がろうとしているのがSDGs2.0。
講演依頼で、大企業の担当者の方々からの要望で多いのが、「社長始め経営陣に本気になって欲しい。そのきっかけをつくってほしい。」といったもの。特に石油関連企業や団体、電気を大量に使用する電鉄関連の企業からも複数依頼を受けてきている。これらの企業や団体の担当者の方々はかなり切実な問題として捉えておられた。
そのような変化に対して、統合報告書に関するご要望に以下のような具体策が喜ばれている。
1.統合報告書など印刷物のスコープ1〜3全てをゼロ化した「CO2ゼロ印刷」
現在既に複数の案件に対応済みだが、再エネ100で印刷、スコープ1〜3まだ全てカーボンニュートラルする「CO2ゼロ印刷」での印刷依頼が統合報告書の製作にも求められるようになって来た。(スコープ1、2までは追加料金なし。スコープ3のみ料金追加必要)
また脱炭素に関連するベンチャー企業からの相談も増えつつある。
弊社はSBTにも登録されており、より信頼性の高い脱炭素に向けた取り組みの下、一冊あたりのカーボンニュートラルされたCO2の表記も可能となっている。
2.自社事業において発生する廃棄物を紙などへアップサイクル
お客様の事業活動で発生するごみなど廃棄物を活用して、紙や紙製品へアップサイクルするサービスが好評だ。
自動車リサイクル業界では部品のリユースやリサイクルなど熱心に取り組まれているが、これまで自動車マニュアルは各事業者に任せて処分されてきた。これを弊社の提案で全て全国から収集し、リサイクルペーパーを製造、子供達が使えるノートにアップサイクルする取り組みからスタートし、現在ではサステナビリティレポートのにもこの用紙が使われるようになった。
この他、国内で年間25万トン排出され、処理費用をかけて処分している卵殻(卵の殻)のごみをアップサイクルした紙も好評だ。
子供たちにも大人たちにも分かりやすく、社会的インパクトも高いからだろう。こちらの用紙は品質的にも何ら問題ない紙なので統合報告書を始めIR関係の印刷物など、数字や写真の品質要求度の高い印刷物にも適している。
このように統合報告書などの印刷物づくりも、より社会課題に対するインパクトのあるモノづくりが求められる始めた。これまでやってきた廃棄物を活用した紙づくりなどのノウハウやネットワークがやっと発揮される時代がやってきたことを嬉しく思う。
おわり